栄養について知ろう

脂質って身体に必要なものなの?

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「脂質」と聞くと、体に悪いもののように思われる方も多いのではないでしょうか。

もちろん血液中の中性脂肪が増えると、血管が詰まりやすくなります。

また内臓脂肪が増えると、糖尿病の発症リスクが高まるでしょう。

しかし脂質は体を構成する成分や生命のエネルギー源として、非常に重要な役割を担う栄養素でもあります。

そんな脂質の役割とはどのようなものなのか、詳しく見てみましょう。

脂質はエネルギー源となる栄養素

脂質は炭水化物やたんぱく質と並び、エネルギーを生み出す栄養素の一つです。

1gあたり約9kcalと、たんぱく質や炭水化物の約2倍のエネルギーを生み出します。

また細胞膜やホルモンの構成成分としての役割も持ち、脂溶性ビタミンの吸収を助ける、体温を維持する、内臓を保護するなどの役割も担っています。

脂質の種類と役割

脂質は以下の4種類に分けられます。

1.コレステロール

2.リン脂質

3.中性脂肪

4.脂肪酸

それぞれの役割を詳しく見てみましょう。

コレステロール

コレステロールが含まれる食材

コレステロールは体内に存在する脂質の一つです。

有害な物質と思われがちですが、細胞膜や各種ホルモン、胆汁酸を作る材料として体内で重要な役割を担っています。

またコレステロールの20~30%は体外から取り込まれ、残りの70~80%は肝臓で糖と脂肪を使って合成されます。

リン脂質

リン脂質のイメージ図

リン脂質は細胞膜の主成分です。

水と油の両方に結合できる両親媒性を持っており、体内の脂肪を運搬・貯蔵したり、細胞間の情報伝達をおこなう役割を担っています。

リン脂質には複数の種類がありますが、よく知られているのはレシチン。

大豆や卵黄などから抽出されます。またリン脂質を含む製品を総称して「レシチン」と呼ぶこともあります。

中性脂肪

中性脂肪のイメージ図

中性脂肪は肉、魚、食用油などの食品に含まれる脂質で、体脂肪の大部分を構成しています。

また単に「脂肪」とも呼ばれ、3つの脂肪酸がグリセロールという物質で結合した構造をしています。

これらは皮下脂肪や内臓脂肪として体内に蓄積され、体のエネルギー源となるのが特徴です。

体内に蓄積された脂肪があるおかげで、私たちは体を動かし続けることができます。

脂肪酸

脂肪酸が含まれる食材

脂肪酸はコレステロールやリン脂質と同様に、細胞膜やホルモンの原材料となります。

また皮下脂肪として内臓を保護したり、体温を維持する働きもあります。

脂肪酸の種類は大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つ。

飽和脂肪酸は、動物性脂肪に多く含まれていることから、肥満の原因になりやすいのが特徴です。

一方で不飽和脂肪酸は、さらにオメガ3系、オメガ6系、オメガ9系に分けられます。

オメガ3系脂肪酸であるDHAは近年、認知機能の低下防止や学力向上に有効であることが分かっています。

脂肪を過剰摂取した場合の影響

脂質異常症が起こる過程の図解

血中のトリグリセリドと悪玉コレステロール値が上昇すると、脂質異常症につながる可能性があります。

また悪玉コレステロールが増えすぎると、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の原因になることもあります。

そのほか中性脂肪は内臓脂肪として蓄積されると、糖尿病を悪化させたり、高血圧を引き起こすことが分かっています。

近年では脂質の過剰摂取が問題に

近年では日本人で脂質を摂りすぎている人が増えていることが問題になっています。

令和元年(2019年)国民健康・栄養調査の結果によると、総摂取エネルギー量に占める脂肪エネルギー比率が30%を超えている人の割合は、20歳以上の男性では約35.0%。

20歳以上の女性では約44.4%です。 

総摂取エネルギー量に占める脂肪エネルギー比率

出典:農林水産省

日本人の食事摂取基準では上記の割合を、1歳以上の男性・女性で20%以上30%未満としているので、上限を上回っていることが分かります。

脂質が不足した場合の影響

ミネラルの働きについて

ダイエットの敵、体調不良の原因として敬遠されがちな脂質ですが、不足することで問題が生じることもあります。

脂質が不足した場合の影響は以下の通りです。

・免疫機能が低下して体の抵抗力が落ちる

・エネルギーが不足して疲れやすい体になる

・細胞膜や血管壁が弱まる

脂質はエネルギー源となり、ホルモンの材料となる重要な栄養素です。

食べ過ぎても不足しても不健康になります。

健康的な生活を送るためにも、毎日の食事でどれくらいの脂質を摂っているのかチェックしておくとよいでしょう。

脂質は量と質を考えよう

農林水産省の「食生活指針」では、一人ひとりの健康増進、生活の質の向上、食料の安定供給を目的として10項目を掲げています。

その7番目にあるのが「食塩と脂肪を控えめにすること」。

この指針を実践するために、動物性・植物性・魚の脂肪をバランスよくとること、栄養成分の表示を見て食品を選ぶ習慣をつけることなどが具体的に示されています。

脂肪は種類によって健康への影響が異なるため、「量」だけでなく「質」にも注意しながら摂取しましょう。